書籍編集者 城村典子のブログ

商業出版の著作権と契約

商業出版の著作権と契約

商業出版の著作権と契約についてお伝えしたいと思います。

1 著作権ってなんだろう
2 印税について
3 契約書って?
4 電子書籍や映画化について
5 海外の出版の可能性

1.著作権ってなんだろう

流通する書籍には

「書籍タイトル」
「著者名」
「出版社名」
「定価」

が記載されています。

この「著者名」として表記されている人が「著作権者」です。

ビジネスネームやペンネームで記載されている場合もありますが、
出版契約書では本名も一緒に記載され、
誰がこの本の著作権を持っている人が明確にしています。

ビジネス書や実用書の場合、原稿はライターが書くことも珍しくありません。
しかし、このライティング作業は、あくまで作業としての書くという行為。
内容についての責任と権利は著作権者にあります。

 

出版物の著作権は

・勝手にその内容を他者が真似してはいけない。

・引用する時には、出典を明らかにする

・引用する際には、一字一句違わず記載する

・著作権を使用する際には、使用料のルールを決める

というようなことです。

その著作権に対し、商業出版では
「出版権」を誰が持っているかというのが重要な要素になります。

自分で作った本にも「著作権」はあり、
自分で作った場合には「出版権」も自分にあるということになります。

ということに対し、

「商業出版」は「出版社」がこの著作物を広く頒布したい
となったら出版契約をもって
誰に著作権のある原稿を、誰に出版権を付与させ、本を流通するか、
というのを決めて、実行されるということです。

「出版権」とは、本を印刷して、広く売ることができるという権利です。

なので、出版権は一つの言語圏内では一社と限られます。
ですから、著者が同じ原稿を2つの出版社で出版するのはルール違反です。

2.印税について

著作権の内容の中の

・著作権を使用する際には、使用料のルールを決める

について

出版社と著作権者の間で契約で決めるのが「印税」です。

「印税」というと税金の一部?と思われがちですが、
実は、昔は紙の書籍の奥付部分に、
一冊一冊「著者検印紙」というのを貼っていました。

どういうことかというと、
勝手に刷ることを防止するわけです。

著者が発行した枚数がわかっていれば、その枚数だけ刷ったことがわかる。
という慣習から「印税」と呼ばれるようになったようです。

契約書には「著作権利用料の支払い」のように記載されていて、
印税と表現されていない契約書もありますが、
通称「印税」と呼ばれています。

著作権者に対して利用料の支払いは、
実売印税(売れた分だけ払う)
発行印税(発行した分だけ払う)

の他にも、「原稿料」として買い切る場合もあります。

印税のお話はこちらのブログにも書きました

商業出版の印税で儲けた人の秘密

3.契約書って?

1、 2でお話したようなことを書面にしているのが「出版契約書」です。

・出版権は誰
・著作権は誰
・著作権の利用の際にはいくら支払うの?

というのが、中心で、

・秘密は守ろう とか
・著作人格権があるから、著作者の意図を曲げた表現はやめよう
・二次利用といって、電子書籍化、映画化などの時にどうするのか
・この原稿の責任は著者で、校正についての責任もありますよ。
・契約期間は何年です。

なんてことが書かれています。

著作権者がこの契約書を見た時
著作権者の権利だから、自分にもタイトルの決定や
カバーのデザインに対して意見を言わせろ!
と思うかもしれません。

ただ、一般的には、この契約書の通りの
著作権者の義務は遂行できていないのが実態です。

なので、そこは前提としての契約の内容は踏まえつつも
成果を考えた最善の対応をしているということだと思います。

4.電子書籍や映画化について

著作権の基本理念は、広く文化の向上のために設定しています。

最近のコンテンツが、フリー素材を基本にしてマネタイズしているように、
あまり権利に縛ると広まらないという弊害があります。

この二次利用についてもそうで、
誰が権利を持っているか明確にしておくことで交渉がスムーズ。
話が早いということになります。

なので、書籍の映画化、ドラマ化などの二次利用の話がある場合は
出版社に話が入った場合は、必ず著者の許可を得ることになります。

著者に先に話が入った場合にも、
当然、出版社にも許可を得る必要がある、
という契約になっていることがほとんどです。

5.海外の出版の可能性

日本で出版した本を、海外で出版したいと思った場合も、
出版社に無断で出版することはできません。

日本の国内でも、単行本を出版したのちに文庫化するというような場合
出版社が異なる時には、大元の単行本の出版社に、
文庫本の出版社は使用料を支払う契約になることがほとんどです。

海外出版の場合も、出版したいという海外の出版社は。
まず、大元の出版社に対して、

自国の言語のエリアでの出版権の権利が空いているか
という問い合わせから始まります。

その言語圏の出版権が空いていれば、交渉に入る。

すでに決まっている場合は、出版できません。
日本の出版社が、海外の出版社に版権のある本を輸入する場合も同様です。

海外出版についてはこちらのブログ記事もあります

商業出版した本を翻訳して海外で出版をする方法

本の原稿をまとめるということは、考えをまとめること
商業出版をするというのは、その考えを読者の価値にして
さらに市場に広めること。

本があることで、映画化や海外出版など、
二次利用の大きな可能性につながります。

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