「人生でほんとうに大切なこと がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話」
一稲垣 麻由美 著
KADOKAWA 刊
https://amzn.asia/b5PeNWf
私ごとなのですが、この原稿を書いている今から2週間前から
「突然、『弱視』の視力で生活する」という状況になりました。
夜中に突然目が痛くなり、
近所の医者に行ったら、
「紹介状を書くから、すぐ大学病院に行って!」ということになり、
そこから、すぐに入院・手術・退院。
何が起こったかというと
「急性緑内障の発作」を起こしてたということなのですが、
これが、すぐに、対応しないと、失明するというものらしく、
私は、失明することなく、手術も綺麗に成功したのですが、
その発作を起こした目は、私の効き目で、
実は、もう片方の目は、生まれつきの「弱視」で、
矯正しても変わらない目で、
ほとんど片目で生活をしていたわけです。
どんな状況かというと、
今まで、右目ではスーパーリアリズム的絵画、超写実作家の絵を見ていた。
左目では、モネのような世界だった。
それが、右目が、ターナーの絵のようになってしまって。モネでみる方が、
まだ、輪郭ははっきりしているだろう
というような感じです。
まだ、2週間なので、まだ慣れないというか、
一方、そうは言っても、毎日生活はしているので、否応なしに慣れてもきていて、
直径10センチの虫眼鏡と、
ステッキと、
MTG記録をメモができないので、
録音機が、私の必須アイテムになっています。
話が自分のことばかりになりましたが、
私の場合は、命関わる問題にはならず、不便だとは言いながらも、
逆に目が見えるありがたさを感じています。
現在、日本では
2人1人ががんになり、3人に1人は、がんで亡くなっている状況で、
医療が進み、がんの治療も進んではいますが、
がんから死亡への確率の高さ
つまり、恐怖の高さと
がんになる人の多さを考えると、
本当に、他人事ではない恐怖が
迫ってきます。
人間、何が怖いと言って、
もちろん、死は怖いわけですが、
「死」だけでも怖いのに、
そこに、どう向き合うのか、
検査や、施術や、治療や、
そこでの、痛みや、恐怖やら
また、同時に、日常生活が普通に送れなくなること、
仕事ができない恐怖、
社会的存在としての自分の危うさなど、
本当に、二乗にも三乗にもなって襲いかかってきて、
病気と闘う以前に、
心が折れてしまうのは、容易に想像できることです。
実際に、立ち向かう心があることで、
がんも状況によって、克服されてるケースが、あるわけですが、
周りのケアも大事ですが、
本人の心の持ちようが、まず大事なのだと思います。
この本は、「精神腫瘍医」(がん専門の精神科医)清水研先生と関わった
患者さん7人の事例で構成されたお話。
清水先生と出会ったことで、
病気と闘う勇気を得られた、
がん患者のお一人が「精神腫瘍医」の存在をもっと知ってほしいという思いをもち
その意志や主旨に大きく共感したノンフィクションライターの稲垣氏が著した本。
国立がん研究センター中央病院(築地)・精神腫瘍科長である清水研さんは、
がん専門の精神科医として、
これまで3000人以上の患者さんやその家族と対話を続けてきています。
その清水先生が、こう語っています。
「人は、人生の最期を意識すると、人生の未解決の課題に取り組もうとする生き物である」
「がんになるということは、はからずも、
先送りしていた自分の課題に取り組むチャンスともいえます。
誰も病気になることを望みませんが、
だからといって、
それによって起こることがすべて不幸だとは言い切れません。
死はすべての人たちにやってきます。
『自分の人生を納得のいくように生きるにはどうすればよいか』
と考えるきっかけを得る事は、大きな意味を持ちます。(後略)」
中途半端な立ち位置の人では、言えない言葉です。
「多くの方は最期。『ありがとう』と言って亡くなっていかれます。
自分の人生を恨んだままなく亡くなっていく方が不思議なほどいないものです
3000人の患者さん、ご家族と真剣に対峙された人の言葉は心に重く響きます。
人は、誰しも死にます。
日々は、死に向かって生きているわけでもあります。
「どう死ぬか」を考えるのは、
「どう生きるか」をより深く考えること。命を持ったものとして、
生かされてる生命をどう生きるかを考えるきっかけなのだと、
私も、自分の体と向き合う、機会をもらったところで、
この本の言葉は、染み入るように受け取りました。
今が、充実している人も
ちょっと、疲れている人も
ぜひ、一読いただきたい本です。
コメントを残す